は拙者も連れていってくれ」
「ならぬならぬ。魔物退治は是非とも拙者にお委せあれ」
というようなわけで、いつまで経っても衆議がまとまらない。すると中で一人がずいと進み出て、
「静まれ、静まれ」と両手を高く挙げて一同を制し「さように各々方《おのおのがた》が争っては、誰がゆくことに相成っても不服の残るは当然のこと。さて此処に、絶対に不服の残らず、その上ことの外面白い思いつきがござる。――」
と、一座をズーッと身廻わす。一同はワイワイとどよめいた。(早くそれを云え)と催促が懸る。
「では申そう」と憎々しいまでに勿体《もったい》をつけて「――実は、各々方は誰方《どなた》も此拠に足をとめて行かぬこととなさるので厶《ござ》る。そしてこの興味ある討伐を、われ等の英雄にして、今夜随一の果報者たる花婿権四郎めに譲るので厶る。いかがで厶るナ?」
「名案じゃ」「名案、名案!」と、たちまち一せいに拍手があって、若侍は半分は好意的に、あと半分はいま紅閨《こうけい》にお妙を擁《よう》しているであろうことを岡焼《おかやき》的に、この緊急動議を決定してしまった。そして酒の激しい勢いでもってワッと立ち上ると、床杯《し
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