しかも切られたのが、手先の中でも一《ひと》っぱし腕利《うでき》きの者ばかり……」
「ふうーん」と虎松は呻《うな》った。
「今どこまで追ってるんだ」
「連雀町《れんじゃくちょう》から逃げだして、どうやら湯島《ゆしま》の方へ入った様子でござります」
「ほう、湯島といやあ、これァまた後戻りだわ。……さあ、一緒について来い、三太!」
「合点でござんす」
虎松は暗闇の中をかきわけるようにして韋駄天《いだてん》ばしりに駆けだした。三太もこれに続く……。
湯島まで行ってみると、殺人鬼は弓町《ゆんちょう》の方へ曲っていったとのこと。
「これァいよいよもって後戻りだわ」
と虎松は呟いた。先刻《さっき》出てきた帯刀邸も、正にこの弓町にあったから。
此方《こちら》は帯刀邸だった。花嫁花婿は座を下って奥に入ったが、若侍どもはいまや酒宴の最中というところへ、殺人鬼が邸近くで暴れているという報告があったから、さあたまらない。一座は俄かに悪性《あくせい》に活気づいた。
「むざむざと十四、五人も切らせるたァ、それは切らせる方に手落ちがあるのだ。よォし、これから行って、拙者の腕を見せてくれる!」
「いや、それで
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