った機械人間がコトリコトリと音を立てて出て来た。
「さあ、出発だ!」
半之丞は機械人間の脊《せ》に飛びのった。すると機械人間は彼の一念に随《したが》って走りだした。ヒューヒューと風を切って、暗澹《あんたん》たる甲州街道を江戸の方へ向って飛ぶように走っていった。
死闘
やがて二刻ちかくたって、半之丞とくろがね天狗の現れたのは、江戸の東を流るる大川に架けられた両国橋の袂《たもと》だった。十日あまりの月が、西空から墜ちんばかりだった。あたりは湖の底のように静かで、行人《こうじん》の気配もない。
「ちぇッ。今夜もあぶれるか」
半之丞は舌打をした。
「人間の匂いさえしない。……」
といったが、横網寄りの商家の屋根の上から、チョコンと出ている一つの首には気がつかなかった。それこそは岡引虎松の辛棒づよい偵察姿勢だとは知る由もなかった。彼は怪人の正体がどう考えても解けない口惜しさに、かろうじて辛棒づよい偵察をつづけているわけだった。
「おおッ――」と半之丞は、電気に觸れたように身慄《みぶる》いした。
「おお珍らしや、向うから来るは確かに人影、占めた!」
半之丞は大きく肯《うなず
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