は痩《や》せ衰《おとろ》えるばかりで、非常に電波に妨害されて居ります。先生のお力を以てこの電波を止めて戴きたい」と言うのです。
これは一種の病人でありまして、その頃勤め先の役所へも、度々そういう投書が来ました。私の所へ来る電波は、こちらから見て居ると、放送局のマイクロフォンの前で三人の男が並んで居る。二人は髭《ひげ》がないが、一人は髭がある。眼鏡を掛けたのが二人と髭のあるのが一人いて、それが何時も私に向って罵詈雑言《ばりぞうごん》を致します。いくら止めろと言っても止めませぬ。しかも受信機がなくてこれが聴えるから、洵《まこと》に始末が悪い。安眠も出来ないから、お止《や》めを願いたいというのであります。
さて、乗込んで来た人物を見ると、洵に眼つきから何から只者でない。生憎《あいにく》私の部屋なるものが、袋小路《ふくろこうじ》の突当《つきあた》りみたいな部屋でして、どうにも逃げる隙《すき》がない。そこでいろいろ考えたのですが、丁度|最前《さっき》の友達が死んで間もなくであったものですから、咄嗟《とっさ》に思いついてその友達の話をすることにしたのです。
それから私は落ち着き払ったような恰
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