好をして「それは誠にお気の毒である。実はそういう電波があります。これは心霊波《しんれいは》と名付けますが、人間のうちでも誠に感度の良い人でないと、この電波は分らぬ。実は私の最も信用する友達で、最近心霊波の研究をするために自《みずか》ら自殺をしたのがあります」という話に移りまして、「あの世とこの世との交通が心霊波で結ばれ、そのために霊媒という受信機みたようなものもある。結局これは心霊波の元締《もとじめ》をやって居る守護神《しゅごじん》というものに頼んで、その電波を止《と》めて貰うより仕様《しよう》がない、あなたをひとつ心霊研究会へ御紹介するから、行ってごらんになったら宜《よ》かろう」とその患者さんに名刺を渡して先方《むこう》へ行って貰うと同時に、私は心霊研究会へ電話を掛けまして「今|斯《こ》う斯《こ》うした人が行くから、宜《よろ》しく頼む」とやりました。
これで危難を逃れた形ですが、到頭《とうとう》一年ほど経ちまして、その男が元気になってやって参り、「私は愈々《いよいよ》郷里《くに》へ帰ろうと思います。郷里の方も大変忙がしく、それに電波ももうこの頃じゃ殆んど聴えない。その上心霊研究会へ
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