ら何まですべて百パーセントに死んだ細君そっくりである。それで思わず霊媒と手を取り合うようなこともあったんだという話をしましたが、私が行った時には、稍々《やや》がさつ[#「がさつ」に傍点]な友人が出て来た。いろいろ話をしたんですが、結局どうもあの世に無事に行き着いたから安心して呉れろ、という極めて普通な話ばかり出るので、少し専門的な話をして見ようと思い、始めたところが「今少し頭が悪いから」というので刎《は》ねられました(笑声)。
私はその友達から原稿を一つ預かっていました。それは雪の降る日に歌った新体詩《しんたいし》でしたが、それを何処かへ世話して呉れと頼まれていたんです。「僕は君の原稿を預かって居るが、あれは何時《いつ》出したら宜《よ》かろうか」と聴いて見ました。そうしたら「そうだね、それは軈《やが》て一週間程すると僕の四十九日が来るから、その時に一つ出して貰いたい」こういう話でした。ところが一週間後の四十九日という日は、八月の最中《さなか》です。八月の最中に雪がチラチラ降る新体詩が出せるものか出せないものか、これはオヤオヤと思ったです。第一、原稿ということがどうしてもその友達に呑み
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