して死んだ。
さてその死後、友達の遺書というのが、私ともう一人の矢張り科学者の友達に遺されていました。その遺書で彼の死んだ事情が最もハッキリして居るのですが、「皆私を引止めて呉れたけれども、自分は科学者として死を選ぶのが一番善いと思ったんで死ぬ。あの世で大いに科学のために奮闘して、心霊科学も研究し、君達に呼びかけるから、君達も何なら早く来たらどうか」こういう事が書いてありました。
私共非常に呆然《ぼうぜん》としまして、科学的に最も尊敬すべき友達が、科学的に心霊というものを信じて死んだ。これは私共頭が悪いから、彼からいくら説明されても、矢張りあの世の在るということが分らないのだろう。とにかく彼が行き着いたかどうか、探して見ようじゃないかという議が、吾々仲間に起ったのです。今度は人数が大分多くなって、十人ばかりの同志がその心霊研究会へ行って友達を呼び出して貰ったんです。
友達は出て来ました。が、少々怪しい友達が出て来た。いつもその友達から聞いていたんですが、霊媒を通じて出て来る細君は自分の細君と全く同じで、咳払《せきばら》いから、声の抑揚《よくよう》から、話振りから、笑い声から、何か
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