、他愛がないという外ない。
『盗まれた脳髄』は「雄弁《ゆうべん》」に載《の》ったもの。このテーマはずいぶん古くから持っていたものであるが、それを小説にしようと、あまり永い間あれやこれやと筋をひねったものであるから、書くときになって、もっといい扱い方があると思いながらも遂に一歩も新しい扱い方ができなかった作品である。僕は今にこの小説のようなことが確かに出来るだろうと思っている。
『或る宇宙塵の秘密』は「ラヂオの日本」に書いた短いもの。将来の科学小説として、この種のものがまず読書界に打って出るのではあるまいかと思う。この辺のものであれば、小説作法を知らない科学者にも、そう苦しまないで書けることと思う。
『キド効果』は「新青年」に書いた。これは作者として相当自信を持って書いたものである。それも将来の科学小説の一つの型になるものだと思っている。これが載ったのは或る年の新年号だった。そのとき紙上に八篇ほどの小説が載り、そしてどの作品が一番よかったかというので、読者採点を募集した。その結果、この『キド効果』は断然一等になるかと思いの外、断然ビリに落ちた。これには尠《すくな》からず悲観したが、僕は今
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