『地球盗難』の作者の言葉
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)僕の本当に企図《きと》しているところの科学小説
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)野村|胡堂《こどう》氏
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本書は、僕がこれまでに作った科学小説らしいものを殆んど全部集めたものだ。科学小説らしい――といって、これを科学小説と云い切らぬわけは二つある。一つは僕が探偵小説として発表したものが一二混っていること、もう一つは僕の本当に企図《きと》しているところの科学小説としては、まだまだ物足らぬ感がするから、本当の科学小説はいよいよ今後に書くぞという作者の意気ごみを示したいことと、この二つの事由《じゆう》によっている。
元来わが国には、科学小説時代というものがまだやって来ていない。しかし強《し》いて過去にこれを求めるなれば、押川春浪《おしかわしゅんろう》氏の『海底軍艦』などが若き読者の血を湧《わか》した時代、つまり明治四十年前後がそうであったようにも思われる。春浪氏の著作中には、早くも今日の潜水艦や軍用飛行機などを着想し、これを小説のなかに思う存分使用したのであった。
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