いものとして排撃《はいげき》している。しかし僕に云わせれば、彼等は識らざるが故《ゆえ》に排撃しているのである。彼等には取扱い得ないが故に敬遠しているのである。それは排撃の理由にならぬ。如何に排撃しようと、科学小説時代の温床《おんしょう》は十分に用意されているのだ。彼等はいまに、自分が時代に遅れたる作家であったことを悟るであろう。時代を認識できない者や不勉強な者は、ドンドン取り残されてゆく。
科学小説時代は、今や温床の上に発芽しようとしている。僕は最近某誌の懸賞に応募した科学小説の選をした。今度が第三回目であって、その前に二回応募があったので、いずれも僕が選をした。今度の選に於て、僕の非常に愕《おどろ》いたことは、その応募作品の質が前二回に比して躍進的向上を示したことである。僕は思わず独言《ひとりごと》をいったくらいだ。――やあ、いよいよ御到着が近づきましたネ、科学小説時代! ――と。僕はそのとき、たしかに科学小説時代の胎動《たいどう》を耳に捕えたのであった。
科学小説時代はいよいよ本舞台に入ろうとしている。それはどんな色の花を咲かせることになるのか、まだ分っていない。どんなものにな
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