の内容は絶対秘密に保たれてある。いよいよ戦争の蓋《ふた》をあけてみると、いかに意外な新科学兵器が飛び出してくるか、実に恐ろしいことである。開戦と同時に、戦争当時国は手の裡《うち》にある新兵器をチラリと見せ合っただけで、瞬時に勝負の帰趨《きすう》が明《あきら》かとなり即時休戦状態となるのかもしれない。勝つのは誰しも愉快である。しかし若《も》し負けだったら、そのときはどうなる。世界列国、いや全人類は目下科学の恩恵に浴《よく》しつつも同時にまた科学恐怖の夢に脅《おびや》かされているのだ。
このように、恩恵と迫害との二つの面を持つのが当今の科学だ。神と悪魔との反対面を兼《か》ね備《そな》えて持つ科学に、われ等は取《と》り憑《つ》かれているのだ。斯《か》くのごとき科学力時代に、科学小説がなくていいであろうか。否《いな》! 科学小説は今日の時代に必然的に存在の理由を持っている。それにも拘《かかわ》らず科学小説時代が来ないのはどうしたわけであろうか。その答は極《きわ》めて月並《つきなみ》である。すなわち今日の小説家に科学を取扱う力がないからである。
或る小説家や批評家は、科学小説を小説的価値のな
前へ
次へ
全13ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング