かに敬二の耳をうつばかりになった。
「あれッ。どうも変だなア。どこへ行っちまったんだろう」敬二は二つの黒い大怪球が、宙に消えてゆくのを見ていて、あまりの奇怪さに全身にビッショリ汗をかいた。
 双生児の怪球はどこへ行った?
 敬二は、まるで狐に化《ば》かされたような気もちになって、掘りあらされた空地《あきち》の草原をあちこちとキョロキョロと眺《なが》めわたした。
 怪球はどこにも見えない。だが、ビビビーンと微《かす》かな怪球の呻《うな》り声だけは聞える。どこかその辺にいるんだろうが、こっちの目に見えないらしい。
 そのときであった。カリカリカリという木をひき裂くような音が聞えだした。鋭い連続音である。
「さあ何か始まったぞ」敬二はその異変を早く見つけたいと思って目を皿のようにして方々を眺めた。遂《つい》に彼は発見したのである。
「あッ、あそこの板塀《いたべい》が……」板塀に、今しもポカリと穴が明いている。フットボールぐらいの大きさだ。その穴が、どうしたというのだろう、見る見るうちに大きく拡がってゆくのである。やがてマンホールぐらいの大きさの穴になり、それからまだ大きくなって自動車のタイヤ
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