、鼓膜《こまく》をつきさすようだった。
「あれッ、あの機械水雷のお化けは、横に転がってゆくよ」敬二が愕きつくすのは、まだ早すぎた。
 草原にポカッと明《あ》いた穴の中から、なにかまた、黒い丸い頭がムクムクともちあがってきた。
「おや、まだ何か出てくるぞ」ムクムクムクとせりあがってきたのは、始めの怪球と形も色も同じの双生児《ふたご》のようなやっぱり大怪球だった。
「呀《あ》ッ、二つになった。二つがグルグル廻りだした。ああ、僕は夢を見ているんじゃないだろうな」
 夢ではなかった。敬二は自分の頬《ほ》っぺたをギュッとつねってみたが、やっぱり目から涙が滾《こぼ》れおちるほどの痛みを感じたから。
 二つの真黒な怪球は、二条の赤い光を宙に交錯《こうさく》させつつ、もつれあうようにクルクルと廻りだした。その速いことといったら、だんだんと速さを増していって、やがて敬二少年のアレヨアレヨと呆れる間もなく、二つの大怪球は煙のように消えてしまった。と同時に、照空灯《しょうくうとう》のように燿《かがや》いていた赤光も、どこかに見えなくなった。ただあとには、さらに高い怪音が、ビビビーン、ビビビーンと、微《かす》
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