○○獣
海野十三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)墓場《はかば》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)突然|狩人《かりゅうど》が現れ、
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眠られぬ少年
深夜の大東京!
まん中から半分ほど欠けた月が、深夜の大空にかかっていた。
いま大東京の建物はその青白い光に照されて、墓場《はかば》のように睡っている。地球がだんだん冷えかかってきたようで、心細い気のする或る秋の夜のことだった。その月が、丁度《ちょうど》宿《やど》っている一つの窓があった。その窓は、五階建ての、ネオンの看板の消えている、銀座裏の、とある古いビルディングの屋上に近いところにあって、まるで猫の目玉のようにキラキラ光っていた。
もし今ここに、羽根《はね》の生《は》えた人間でもがあって、物好きにもこの窓のところまで飛んでいったとしたら、そしてその光る硝子《ガラス》窓のなかをソッと覗《のぞ》いてみたとしたら、そこに一人の少年が寝床《ねどこ》に横《よこた》わったまま、目をパチパチさせて起きているのを発見するだろう。敬二《けいじ》――といった。その少年の名前である。
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