ようかと思った。でも、すぐそうするには及ばなかった。というのは、その怪しき大火光の元が分るような、不思議な怪物が、敬二の視界のなかにお目見得したからである。それは丁度、東京ビルの横に、板囲《いたがこ》いをされた広い空地《あきち》の中であった。そこには黄色くなった雑草が生《は》えしげっていて、いつもはスポンジ・ボールの野球をやるのに、近所の小供《こども》や大供《おおども》が使っているところだった。その平坦《へいたん》な草原の中央とおぼしきところの土が、どういうわけか分らないが、敬二の見ている前で、いきなりムクムクと下から持ちあがって来たから、さあ大変! 東京ビルの横腹を染めていた大火光は、その盛りあがった土塊《どかい》のなかから、照空灯《しょうくうとう》のようにパッとさし出ているのであった。地面の下からムクムクと頭をもちあげてきたものは、一体何だろう。
深夜の探険
敬二はもうじッとして居られなかった。
「――原庭先生のおっしゃったのは、これじゃないかなア。人間の知らない変な生物が、地面の下をもぐって出てきたのではなかろうか。ウン、そうだ。もっと近くへ行って、何が出てくるか
前へ
次へ
全48ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング