うにそろそろやるように注意を頼む」


   恐ろしき謎


 鋸引きの音が、ごりごりいっている間に、敬二は博士のそばへいって声をかけた。
「博士《せんせい》、なぜ○○獣を別々に離して置かないと危いのですか」
「うん。これは○○獣の運動ぶりから推《お》して、そういう理屈になるんだよ。つまり○○獣というのは二つの球が互いに相手のまわりに廻っているんだ。丁度《ちょうど》二つの指環《ゆびわ》を噛みあわしたような恰好に廻っているんだ。こういう風に廻ると、二つの球は互いに相手に廻転力を与えることになるから、二つの球はいつまでも廻っているんだ。だから二つの球を静止させるには、二つの球の距離を遠くへ離すより外ないのだ。見ていたまえ。もうすぐ○獣《マルじゅう》と○獣《マルじゅう》とが切り離せるから」
 鋸引《のこぎりび》きが済《す》んで、セメント柱は二つに切られた。博士の指図によって、消防隊の人々が一方のセメント柱に手をかけて、えんやえんやと引張った。
「これは駄目だ。中々動きそうもない」
「そんなに強いかね。じゃあ、もっと皆さんこっちへ来て手を貸して下さい」
 更に人数を殖《ふ》やして、えんやえんや
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