と引張った。するとセメント柱は、やっと両方に離れだした。
「しめた。もっと力を出して。そら、えんやえんや」
 うんと力を合わせて引張ったので、セメント柱はごろごろと台の上から下に転がり落ちた。
 あっと思ったが、もう遅かった、ぐわーん、どどーんと大きな音とともに真白な煙が室内に立ちのぼった。
 人々の悲鳴、壁や天井の崩れる音。思いがけないたいへんな椿事《ちんじ》をひきおこしてしまった。
 敬二少年も、この大爆発のために、しばらくは気を失っていた。暫《しばら》く経《た》ってやっと気がついてみると、壁も天井もどこかへ吹きとんでしまって、頭上には高い空が見えていた。あたりを見ると、そこには大勢の人が倒れていた。セメントの破片が白く飛んでいた。
 しかし不思議なことに、○○獣の姿はどこにも見当らなかった。
 なぜ大爆発が起ったのやら、なぜ○○獣がいなくなったのやら、そこに居合わせた誰にもさっぱり解らなかったけれど、ずっと後に、やはりあのとき重傷を負った蟹寺博士が病院のベッドの上で繃帯《ほうたい》をぐるぐる捲きつけた顔の中から細々とした声で語ったところによると、
「儂の失敗じゃ。○○獣を切り離し
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