、分っているよ、敬二君。こいつは用心をして扱わないと、飛んだことになるのだ。まあ儂《わし》のすることを見ているがよい」
蟹寺博士は、セメント詰めの○○獣をトラックの上に積ませた。そしてそのトラックは騒ぎを後に、東京ホテルの広場から走りだした。その後《うしろ》からは、幾十台の自動車がぞろぞろとつき従ってゆく。
やがてこのセメント詰めの○○獣は、帝都大学の構内に搬《はこ》びこまれた。
蟹寺博士は先頭に立って、指図《さしず》をしていた。まずX線研究室の扉《ドア》がひらかれ、その中に○○獣を閉じこめたセメント柱《はしら》が搬びこまれた。室内は直ちに暗室にされた。ジイジイとX線が器械から放射され、うつくしい蛍光が輝きだした。
「ああ、見えるぞ」
博士は叫んだ。蛍光板の中にぼんやりと二つの丸い球が見えだした。
後からついてきた人たちも、それっというので眼を瞠《みは》った。
「どうもこの儘《まま》では危い。この二つの○○獣を互いに離して置かないと、いつまた前のようにぐるぐる廻りだすか分らない。さあ、この辺から、セメントの柱を二つに鋸引《のこぎりび》きをしてくれたまえ。柱が壊《こわ》れないよ
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