ドン助の行方が気になるので、しきりにそのあたりを探しまわってたが、何処を探してみてもいない。博士はドン助が木函《きばこ》ごと○○獣に噛られてしまったといったが、始めはそれが冗談と思っていたのに、だんだん冗談ではないことが敬二に分ってきた。
「もし、貴女《あなた》はなぜその木屑をメリケン袋の中にぎゅうぎゅうつめこんでいるんですか」
 と、黒眼鏡の外国婦人に声をかけた。
 すると、かの外国婦人は、怒ったような顔を敬二の方に向けると、
「あなた、分りませんか。この木屑の中に、あなたの友達の身体が粉々になってありますのです。おお、可哀《かわい》そうな人であります。わたくし、こうして置いて、後で手篤《てあつ》く葬《ほうむ》ってやります。たいへんたいへん、気の毒な人です。みな、あの○○獣のせいです」
「すると、ドン助は○○獣に殺されて、身体はこの木屑と一緒に粉々になっているというのですか。本当ですか、それは――」
「本当です。わたくし、あなたたちのように嘘つきません」
「僕だって嘘なんかつきやしない」
 と、敬二少年は腹を立ててみたが、とにかくもしそれが本当だとすると、この外国婦人は親切なひとだと
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