の地底《じぞこ》に大穴《おおあな》が出来るだけのことじゃないんですか」
「うん、まあ見ていたまえ。儂《わし》の胸にはちゃんと生擒りの手が考えてある」蟹寺博士は、大いに自信のある顔つきであった。
 そのうちに穴はどんどん掘りさげられていった。千五百人の人が働いて、五十六の大穴が掘れた。もうあとは、○○獣が外へ出てきて、陥穴《あとしあな》におちるばかりであった。蟹寺博士はじめ大勢の見物人は、それがいつ始まるだろうかと、首を長くして○○獣の出てくるのを待ちわびた。
「おお、あそこから○○獣が出てきたっ!」敬二が突然大きな声で叫んで、ホテルの南側の窓下を指《ゆびさ》した。


   女流記者


 敬二の指した方を、大勢の人々は見てはっとした。
 今やホテルの南側の窓下が、がりがりごりごりと盛んに噛《かじ》られてゆき、見る見る大きな穴が明《あ》いてゆく。
「うわーッ、あれが○○獣だ」
「危いぞ。皆《みんな》下がれ下がれ」
 見物人は顔色をかえて、後へ尻込《しりご》みをするのだった。
 勇敢なのは、蟹寺博士だった。
 博士はその前に、前かがみになって、じっと見つめている。
 そのとき、敬二少年は
前へ 次へ
全48ページ中38ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング