説明をしていた。
「いいかね。このとおりやってくれたまえ」
「ずいぶん大きな穴ですね。もっと人数を増《ま》さなきゃ駄目です」
 と、隊長の一人がいった。
「要ると思うのなら、すぐ手配をして集めてきたまえ。○○獣の生擒《いけどり》がうまくゆかなければ、この事件の被害はますます大変なことになるのだ。井戸掘機械なりとなんなりと、要ると思うものはすぐ集めてきて、早くこのとおりの穴を掘ってくれたまえ」
 蟹寺博士は気が気でないという風に、消防隊を激励《げきれい》した。
 その甲斐があってか、まもなく東京ホテルを中心として、その周囲に深い穴がいくつとなく掘られていった。
「博士《せんせい》。こんなに穴をあけてどうするんですか」
「おう、敬二君か。これは陥穽《おとしあな》なんだよ。○○獣をこの穴の中におとしこむんだよ」
「へえ、陥穽ですか。なるほど、ホテルの周囲にうんと穴を掘って置けば、どの穴かに○○獣が墜落するというわけなんですね」
「そのとおりそのとおり」
「博士《せんせい》、穴の中に落っこっただけでは駄目じゃありませんか。なぜって、穴の中で○○獣が暴れれば、穴がますます大きくなり、やがて東京市
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