思われる。
「貴女は一体どういう身分の方なんですか」
 と、敬二は彼女に聞きたいと思っていたことを訊《たず》ねてみた。
「わたくしはメアリー・クリスという英国人です。タイムスという新聞社の特派員です。この○○獣の事件なかなか面白い、わたくし、本国へ通信をどんどん送っています。いや本国だけではない、世界中へ送っています」
「ははあ、女流新聞記者なのですか」
 敬二は始めて合点《がてん》がいったという顔をした。


   ○○獣|生擒《いけどり》


 そのとき、大勢の群衆がうわーっと鬨《とき》の声をあげた。
「騒《さわ》ぐな騒ぐな」
 と、蟹寺博士は群衆を一生懸命に制しているが、なかなか鎮《しず》まらない。
「さあ、セメントを入れろ!」
 消防隊員は総出《そうで》でもって、穴の中にしきりにセメントの溶かしたものを注《つ》ぎいれている。もちろんそれは蟹寺博士の指図《さしず》によるものであった。
「どうしたんです」
 と、敬二が見物人に聞くと、
「いや、とうとう○○獣が穴の中に墜《お》ちたんだとよ」
「えっ、○○獣が……」
 敬二が愕《おどろ》いているうちにも、セメントは後から後へと流しこま
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