覚えている。
先生のお話になったようなことがあっていいものだろうか。
不思議の音響
敬二少年は、もうすっかり目が冴《さ》えてしまった。寝ていても無駄なことだと思ったので、彼は寝床から起き出して、冷々《ひえびえ》した硝子《ガラス》窓に近づいた。月はいよいよ明《あきら》かに、中天《ちゅうてん》に光っていた。なぜ月は、あのように薄気味のわるい青い光を出すのだろう、どう考えたって、あれは墓場から抜け出して来たような色だ。さもなければ、爬虫類《はちゅうるい》の卵のようにも思える。敬二には、今夜の月がいつもとは違った、たいへん気味のわるいものに思えてくるのだった。
そのときだった。
ビビビーン。奇妙な音響が敬二の耳をうった。そう大きくない音だが、肉を切るような異様《いよう》に鋭い音だった。
「今時分、何の音だろう?」硝子窓の方に耳をちかづけてみると、その窓硝子がビビビーンと鳴っているのだった。
なぜ窓硝子は鳴るのだろう、彼はこれまでにこの窓硝子の鳴ったのを一度も聞いたことがなかった。だからたいへん不思議なことだった。だが窓硝子はひとりで鳴るはずがない。必ず何処かに、この窓硝
前へ
次へ
全48ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング