しょうか。人間よりもっと豪い生物が必ずいるに遺いないのです。そういう生物が、いつわれわれの棲《す》んでいる地球へやって来ないとも限らない。彼らは、その勝《すぐ》れた頭脳でもって、人間たちを立ち処《どころ》に征服してしまうかもしれない。丁度山の奥に蟻《あり》の一族が棲んでいて、天下に俺たちぐらい豪いものはなかろうと思っていると、そこへ突然|狩人《かりゅうど》が現れ、蟻は愕《おどろ》くひまもなく、人間の足の裏に踏みつけられ、皆死んでしまったなどというのと同じことです。人間もひとりで豪がっていると、今に思いがけなくこの哀《あわ》れな蟻のような愕きにあうことでしょう。みなさん、分りましたか」
 教室に並んでいた生徒たちは、ハイ先生、分りましたと手をあげた。敬二も手をあげたことはあげたんだが、彼は先生の話がよくのみこめなかった。ただ彼は、人間よりずっと豪い生物がいる筈だと聞かされて、非常に恐ろしくなった。そしてなんとなく原庭先生が、地球人間ではなく、地球人間より豪い他の天体の生物が、ひそかに原庭先生に化けて教壇の上から敬二たちを睨《にら》んでいるように思えて、急に身体がガタガタふるえてきたことを
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