「破りました。ニュースを二十円で、ワタクシ買いました。外《ほか》の人にきっと話すことなりません、約束しました。ところが今日の新聞、みな○○獣のこと書いています。大々的に書いています。それでもあなた大嘘つきありませんか」
「ま、待って下さい。ぼ、僕はなにも知らないのです。喋《しゃべ》ったとすれば、ドン助が喋ったのかもしれません。僕は喋らない」
「ドン助? ああ、あの太った人ですね。ドン助どこにいます。ワタクシ会います。彼にきびしく云うことあります。すぐつれて来てください」
「ドン助をですか。わーッ」またドン助だ。ドン助は一体どこに行ってしまったんだろう。敬二はローラというその外国婦人の前を逃げるようにしてすりぬけた。ローラは拳《こぶし》をふりあげながら、あとから追いかけてくる。捉《つかま》ってはたいへんと、敬二は、ビルの裏へにげこんだ。
 でもローラの金切り声はおいかけてくる。
 さあ、そうなると逃げるところがなくなった。といって捉ってはどんな目にあうかもしれない。そのとき敬二はいい隠れ場所をみつけた。それは外国人がホテルへついて荷物を大きな荷造りの箱から出したその空箱《あきばこ》がい
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