くつも重ねてある場所であった。敬二はそのうちで一番大きい箱に見当をつけて、腕をすりむくのも構《かま》わず、夢中になって空箱のなかにとびこんだ。
そのとき彼は、箱の奥に、なんだかグニャリとするものにつきあたってハッとした。
ドン助の行方
空き箱の奥のグニャリとするものにつきあたって、敬二少年は心臓がつぶれるほどおどろいた。何だろうと思って目をみはったとき「ごーッ」という音が耳に入った。大きな鼾《いびき》であった。
「なんだ、こんなところに寝ているんだもの、どこを探したって分る筈がない」空き箱の中に窮屈《きゅうくつ》そうに、身体を、縮《ちぢ》めて寝こんでいるのは、行方不明になったドン助だった。酒の香《におい》が箱のなかにプンプンにおっていた。
敬二はドン助をそっと揺《ゆ》りおこした。ところがそんなことで目のさめるような御当人《ごとうにん》ではなかった。といって箱のなかであるから、あまり音をたてては、ローラに知れる。そこで一策《いっさく》をかんがえて、ドン助のはりきった太《ふと》ももをギューッとつねってやった。
「ああ、あいてて……」膨《ふく》れかけた鼻提灯《はなちょうち
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