まして、身体の全長は五十メートルぐらいもありました。しかし不思議なのはその身体です。これはまるで水母《くらげ》のように透きとおっていて、よほど傍へよらないと見えません。とにかく恐ろしい獣《けだもの》で、私の考えでは、あれはフライにして喰べるのがいちばんおいしいだろうと思いました。云々」
 敬二はそこまで読むと、ドン助の大法螺《おおぼら》にブッとふきだした。ドン助はいうことが無いのに困って、こんな出鱈目《でたらめ》をいったのだろうが、フライにして喰べるといいなどとはコックだというお里を丸だしにしていて笑わせる。


   ローラ嬢の立腹


 その日、お昼が近くなったというのに、ドン助が帰ってこないので、足立支配人はプンプンの大プリプリに怒っていた。
「こら給仕お前は永田の居所《いどころ》を知っているくせに、俺にかくしているのだろう。早くつれてこい。もう三十分のうちにつれてこないと、お前の首をとってしまうぞ。あいつにはウンといってやらんけりゃならん。俺という支配人が居るのに、東京ビルの主任だなんて新聞にいいやがって、怪《け》しからん奴だ」
 プリプリと足立支配人は怒りながら、向うへいって
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