《そくしゃ》ケースに入ったライカを首にかけて離さなかった。使いにゆくときも、食事をするときも寝るときも、彼はカメラを首にかけていた。カメラを離しているのは、お風呂に入るときだけだった。彼はこの一週間のうちに、十円以上の値打のあるなにか素晴らしい写真をとりたいものと、それをのみ念《ねん》じていた。
ドン助はどうしたのか、さっぱり姿を見せなかった。
十円儲かったその次の日の朝のことだった。配達された朝刊を見て、敬二は目を丸くして愕いた。
社会面のトップへもって来て、三段ぬきのデカデカ活字で○○獣のことがでていたのである。
――ビル崩壊の謎はこれか? ○○獣を見た東京ビル主任永田純助氏語る――
という標題で、「私は昨夜この眼で不思議なけだもの○○獣を見ました。これは雪達磨《ゆきだるま》を十個合わせたぐらいの丸い大きな目をもった恐ろしい怪物《かいぶつ》です。そいつは空からフワリフワリと下りて来て、私を睨《にら》みつけたのです。私は日本男子ですから、勇敢にも○○獣を睨みかえしてやりましたが、その○○獣の身体というのは、狐のように胴中《どうなか》が細く、そして長い尻尾《しっぽ》を持ってい
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