たんであろうか。
敬二少年は、思いがけなく十円紙幣が懐中《ふところ》に転《ころ》がりこんだので、彼はしばし夢ごこちであったが、いくど懐中から出して改めてみても、十円紙幣はいつも十円紙幣に見えた。化《ば》け狸《たぬき》がくれた紙幣ならもうこのへんで木《こ》の葉《は》になっていいころだったが、そうならないところを考えると、なるほどやはり本当に十円|儲《もう》かったのだと分った。
そうなると敬二は、この十円をどういう具合につかったらいいのだろうかと、また考えこまなければならなかった。
いろいろ考えた末、彼はいいことを考えついた。それはカメラを手に入れることだった。カメラを手に入れるといっても、十円のカメラを買ったのでは、みすぼらしい器械しか手に入らない。それではつまらぬと思ったので、たいへん考えた末、ちかごろ高級カメラとして名のあるライカを借りることにした。ライカを一週間借りて損料《そんりょう》十円――ということにきまった。この店は、敬二がよく使いにゆく店だったので、店でもたいへん便宜《べんぎ》をはかってくれて、十円の損料だけでよいということだった。
敬二はすっかり嬉しくなって、速写
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