た。そして眼には、大きな黒い眼鏡をかけ、いままで崩れた土塊をおこしていたらしく、右手には長い金属製の尖《とんが》り杖《づえ》をもっていた。
「えッ、あなたが買うんですか」
「買います。これだけお金、あげます。ではワタクシ買いましたよ。外《ほか》の人に話すこと、なりません。きっと話すことなりません」
 そういって、ドン助の手に素早《すばや》く握《にぎ》らせた紙幣――掌《てのひら》をあけると、十円札が二枚入っていた。
「ほほう、二十円――」
「ドン助さん。これ偽《に》せ札《さつ》じゃないのかい」
 ドン助は偽せ札と聞いて、天の方にすかしてみたが、やがてかぶりをふって、その一枚を敬二の懐中にねじこんだ。
 怪しき黒眼鏡の外国婦人は何者だろう?
 蟹寺博士は、この大秘密をうまく解くことができるだろうか。
 それに○○獣は、今どこへ隠れてしまったんだろうか。そも○○獣とは何ものだろう。


   また新聞記事


 あの不思議な○○獣《マルマルじゅう》は、一体どこへいってしまったんだろう。
 それからまた、硬いコンクリートや鉄の柱がはげしい音をたてて消えてゆくビルディングの奇病は、その後どうなっ
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