がなかった。警視庁からは、水久保《みずくぼ》捜査係長が主任となって、この原因の知れないビルの崩壊事件を調べることになった。
「どうも分らない。殺人事件の犯人を捜す方がよっぽど楽だ」と、智慧の神様といわれている水久保係長も、あっけなく冑《かぶと》をぬいでしまった。
山ノ内総監も「分らない」という報告を聞いて不興気《ふきょうげ》な顔をしてみせたが、さりとてこれがどうなるものでもなかった。
「水久保君。分らないというだけでは、帝都三百万の市民にたいして、申訳《もうしわけ》にならないぞ。分らないにしても、もっと何か方法がありそうなものじゃないか。こんな風にしてみれば或いは分るかもしれない、といった何か思いつきはないかネ」
「そうでございますネ」と水久保係長はしきりに頭をひねっていたが、急に思いついたという風に手をうって「そうだ。これは一つQ大学の変り者博士といわれている蟹寺《かにでら》先生に鑑定をねがってみてはどうでしょう」
「おお、蟹寺博士か。なるほど、そいつはいい思いつきだ。先生は非常な物識《ものし》りだから、きっとこの不思議をといて下さるだろう。ではすぐ博士に電話をかけて、おいでを願お
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