をふりかえってみると、さあ何ということであろう。東京ビルの入口に立っている太い柱の一本が、下の方からだんだん抉《えぐ》られてくるのであった。柱はみるみる抉られてしまって、メリメリと、大きな音をたててゴトンと下に落ちた。そして中心を失って、スーッと横に傾《かたむ》くと、地響《じひびき》をたてて地上に仆《たお》れ、ポーンと粉々にこわれてしまった。
敬二少年は、、わずかに身をかわしたので、辛《かろ》うじてその柱の下敷きになることから救われた。
カチカチカチッ。――また怪音がする。
「おやッ――」と、音のする方をふりかえった少年の目に、また大変な光景が目にうつった。
それは、東京ビルの玄関が、下の方からズンズン抉られてゆくことであった。まるで砂糖で作った菓子を下の方から何者かが喰べでもしているように見えた。堅牢《けんろう》なコンクリートの壁が、みるみる消えてゆく。そのうちにガラガラと音がして、ぶったおれた。
「ややッ、これは……」寝坊《ねぼう》の宿直《しゅくちょく》が、やっと目をさまして、とびだしてきた。彼はあまりのことに、まだ夢でもみている気で、目をこすっていた。
警官が駈《か》けつ
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