たってふられがちに出来あがっている――まったくわれながらアイソのつきる野郎ではある。おまけに気じるしときているので念が入りすぎている。どうかんがえてみても乞食になるよりほかになるものがないからそれでまあやってるわけなんだが[#「なんだが」は底本では「なんだか」]乞食も決して楽じゃないね。
3
去年病院を出てから二十日ばかり大島のゆ場にいた。もう少しのぼると例の穴のところまでゆかれるのだが、穴なんか覗いたっておもしろくもあるまいと思ってやめた。それに恐ろしくからだがつかれてもいたから歩くのがおっくうでもあった。毎日なんにもせずねころんでばかりいた。ゆ場の主人が「先生ぜひなにか書いて下さい!」というようなことで歌を一首つくった。たぶん今頃かけじにでもなってぶら下っていることだろう。
[#天から2字下げ]島人の疲れいたはる御神火の恵みあふるる湯のけむりかも
てんだ。
それからイセの津で夏をくらし、八月末に能登へ行った。それから新潟へ行こうかと思っていたが尋ねる人があいにくルスだったのでやめてかえって来た。能登のことをちょいと話したいが長くなるから、またいずれとして――
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