《くごうむら》に遠い先祖の遺族を訪《たず》ねた青年の日から、今はすでに四十二歳の厄年《やくどし》を迎えるまでの半蔵を見て来た寿平次には、すこしもあの人が変わっていないという話も出る。なるほど、水戸《みと》の学問が興ったころから、その運動もまたはなやかであったころから、それと並んで復古の事業にたずさわり、ここまで道を開《あ》けるために百方尽力したは全国四千人にも達する平田|篤胤《あつたね》没後の諸門人であり、その隠れた骨折りは見のがすべきではないけれども、中津川の景蔵、香蔵、馬籠の半蔵なぞの同門の友だち仲間が諸先輩から承《う》け継いだ国学で、どうこの世界の波の押し寄せて来た時代を乗ッ切るかは見ものだという話なぞも出る。
「痛《いた》」
思わずお民は添い寝をしている子供の鼻をつまんだ。子供が乳房をかんだのだ。お民は半ば身を起こすようにした。彼女はそっと子供のそばを離れ、おばあさんやお里のいる方へ一緒になりに行こうとしたが、そのたびに和助が無心な口唇《くちびる》を動かして、容易に母親から離れようとしなかった。
五
「まあ、お前のように、そう心配したものでもないよ。」
こ
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