起こした土は山のように盛りあげられて、周囲にある墓の台石もそのために埋《うず》められて見える。
 しばらく半蔵は人の集まるのを待った。おまんらは細道づたいに、閼伽桶《あかおけ》をさげ、花を手にし、あるいは煙の立つ線香をささげなどして、次第に墓地へ集まりつつあった。そこここには杉《すぎ》の木立《こだ》ちの間を通して、恵那山麓《えなさんろく》の位置にある村の眺望《ちょうぼう》を賞するものがある。苔蒸《こけむ》した墓と墓の間を歩き回るものがある。
「いつ来て見ても、この御先祖のお墓はいい。」
 と寿平次は半蔵に言って見せる。それは万福寺を建立した青山|道斎《どうさい》の形見だ。万福寺殿昌屋常久禅定門《まんぷくじでんしょうおくじょうきゅうぜんじょうもん》の文字が深く刻まれてある古い墓石だ。いつ来て見ても先祖は同じように、長いと言っても長い目で、自分の開拓した山村の運命をそこにながめ暮らしているかのようでもある。
「いかにもこれは古人のお墓らしい。」
 とまた寿平次は言っていた。いつのまにか松雲も来て半蔵のうしろに立ったが、静かな声で経文を口ずさむことがなかったら、半蔵はそこに和尚があるとも気づ
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