た。この世を辞し去る旅人の遺骸を前にして、和尚がおくる餞別《せんべつ》は、長い修業とくふうとから来たような禅僧らしいその一語に尽きていた。
式も済み、一同の焼香も済んで、半蔵はその日の会葬者へ礼を述べ、墓地まで行こうという人たちと一緒に本堂を出た。寺の境内にある銀杏《いちょう》の樹《き》のそばの鐘つき堂のあたりで彼は近在帰りの会葬者に別れ、経王石書塔《きょうおうせきしょとう》の文字の刻してある石碑の前では金兵衛にも別れた。山門の外の石段の降り口は小高い石垣《いしがき》の斜面に添うて数体の観音《かんのん》の石像の並んでいるところである。その辺でも彼は荒町や峠をさして帰って行く村の人々に別れた。
小山の傾斜に添うた墓地の方では、すでに埋葬のしたくもできていた。半蔵らはその入り口のところで、迎えに来る下男の佐吉にもあった。用意した場所の深さは何尺、横幅何尺、それだけの深さと横幅とがあれば大旦那《おおだんな》の寝棺を納めるに充分であろうなぞと佐吉は語る。やがて生々《なまなま》しい土のにおいが半蔵らの鼻をついた。そこは青山の先祖をはじめ、十七代も連なり続いた古い家族の眠っているところだ、掘り
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