たばかりの姉弟《きょうだい》が三人づれで寺の廊下を回って来た。中でも、妻籠から来た正己はじっとしていない。これが馬籠のお寺かという顔つきで、久しぶりに一緒になったお粂や宗太を案内に、太鼓のぶらさがった本堂の方へ行き、位牌堂《いはいどう》の方へ行き、故人|蘭渓《らんけい》の描いた本堂のそばの画襖《えぶすま》の方へも行った。松雲和尚の丹精《たんせい》からできた築山風《つきやまふう》の庭の見える回廊の方へも行った。この活発な弟を連れて何度も同じ板の間を踏んで来る姉娘の白足袋《しろたび》も清げに愛らしかった。
 儀式の始まる時も近づいた。年老いた金兵衛は寺の方で棺の到着を待ち受けていた一人であるが、その時、伊之助と一緒に方丈を出て、勝重の前を会釈して通った。この隠居は平素よりも一層若々しく見えるくらいの結い立ての髪、剃《そ》り立ての顔で、伊之助に助けられながら本堂への廊下を通り過ぎた。一歩一歩ずつ小刻みに刻んで行くその足もとには無量の思いを託して。


「喝《かつ》。」
 式場での弔語の終わりにのぞんで、松雲和尚はからだのどこから出したかと思われるような、だれもがびっくりするような鋭い声を出し
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