一緒によく父を見て置こうとした。長い眉《まゆ》、静かな口、大きな本陣鼻、生前よりも安らかな顔をした父がそこに眠っていた。多勢のものが別れを告げに棺の周囲に集まる混雑の中で、半蔵は自分の子供に注意することを忘れなかった。ようやく物心づく年ごろに達して、部屋《へや》のすみに腕を組みながら、じっと祖父の死を考え込むような顔つきをしているのは宗太だ。お粂は、と見ると、これは祖父にかわいがられた娘だけに、姉らしく目のふちを紅《あか》く泣きはらして、奥の坪庭の見える廊下の方へ行って隠れた。
寿平次の妻、お里も九歳になる養子の正己《まさみ》(半蔵の次男)を連れて、妻籠からその夕方に着いた。日が暮れてから、半蔵は村の万福寺住持が代理として来た徒弟僧を奥の間に迎え、人々と共に棺の前に集まって、一しきり読経《どきょう》の声をきいた。吉左衛門が生前の思い出話もいろいろ出る中に、半蔵は父が小前《こまえ》のものに優しかったこと、亡《な》くなる前の三日ほどはほとんど食事も取らなかったこと、にわかに気分のよいという朝が来て、なんでも食って見ると言い出し、木苺《きいちご》の実の黄色なのはもう口へははいるまいかなぞと
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