らげた。吉左衛門は床の上にすわったまま、枕《まくら》を引きよせて、それを膝《ひざ》の上に載せながら、
「まあ、金兵衛さんのところへも顔を出したし、これでおれも気が済んだ。明日か明後日のうちにはお粂《くめ》や宗太を連れて、墓|掃除《そうじ》だけには行って来たい。」
 そう言って、先代隠居半六の命日が近いばかりでなく、村の万福寺の墓地の方には、早世した二人の孫娘が、亡《な》きお夏とお毬《まり》とが、そこに新しい墓を並べて眠っていることまでを、あわれ深く思いやるというふうであった。
「あれもこれもと思うばかりで、なかなか届かないものさね。」
 とも吉左衛門は言い添えた。
 その晩、母屋《もや》の方へ戻《もど》って行く半蔵を送り出した後、吉左衛門はまだ床の上にすわりながら、自分の長い街道生活を思い出していた。半蔵の置いて行った話が心にかかって、枕についてからもいろいろなことを思いつづけた。明日もあらば、と父は思い疲れて寝た。

       七

 六月にはいって、半蔵は尾州家の早い版籍奉還を聞きつけた。彼は福島総管所から来たその通知を父のところへ持って行って読み聞かせた。
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