ままに新しい袷《あわせ》の寝衣《ねまき》の袖《そで》に手を通した。半蔵の見ている前で、細い紐《ひも》を結んで、そこに敷いてある床の上にすわった。七十一歳を迎えた吉左衛門は、かねてある易者に言われたよりも一年多く生き延びた彼自身をその裏二階に見つけるような人であった。
「半蔵、見ておくれよ。」とおまんが言った。「ことしはお父さんに、こういうものを造りましたよ。わたしの丹精《たんせい》した袷だよ。お父さんはお前、この年になるまでずっと木綿《もめん》の寝衣で通しておいでなすった。やわらかな寝衣なぞは庄屋に過ぎたものだ、おれは木綿でたくさんだ――そうおっしゃるのさ。そりゃ、お前、氏神さまへ参詣《さんけい》する時の紙入れだって、お父さんは更紗《さらさ》の裏のついたのしかお使いなさらないような人だからね。でも、わたしは言うのさ。七十の歳《とし》にもおなりになるなら、寝衣にやわらか物ぐらいはお召しなさるがいいッて――ね。どうしてもお父さんはこういうものを着ようとおっしゃらない。それをわたしが勧めて、ことしから着ていただくことにしましたよ。」
 こんなおまんの心づかいも、吉左衛門の悲哀《かなしみ》を柔
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