、神祗官《じんぎかん》の中心勢力をかたちづくる平田派の学者を率いて、直接に新政府の要路に当たっているとか。今は師も文教の上にあるいは神社行政の上に、この御一新の時代を導く年老いた水先案内である。全国の代表を集めて大いに国是《こくぜ》を定め新制度新組織の建設に向かおうとするための公議所が近く東京の方に開かれるはずで、その会議も師のような人の体験と精力とを待っていた。


 延胤は関東への行幸のことについてもいろいろと京都方の深い消息を伝えた。かくも諸国の人民が新帝を愛し奉り、競ってその御一行を迎えるというは理由のないことでもない。従来、主上と申し奉るは深い玉簾《ぎょくれん》の内にこもらせられ、人間にかわらせたもうようにわずかに限りある公卿《くげ》たちのほかには拝し奉ることもできないありさまであった。それでは民の御父たる天賦の御職掌にも戻《もと》るであろう。これまでのように、主上の在《いま》すところは雲上と言い、公卿たちは雲上人ととなえて、龍顔は拝しがたいもの、玉体は寸地も踏みたまわないものと、あまりに高く言いなされて来たところから、ついに上下隔絶して数百年来の弊習を形造るようになった。今
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