社を伊那の山吹村に訪い、そこに安置せられた国学四大人の御霊代《みたましろ》を拝し、なお、故翁の遺著『古史伝』の上木頒布《じょうぼくはんぷ》と稿本全部の保管とに尽力してくれた伊那の諸門人の骨折りをねぎらいながら、行く先で父鉄胤に代わって新しい入門者に接して来たことなぞを聞いた。
 おまんやお民も茶道具を運びながらそこへ挨拶《あいさつ》に出た。半蔵はそのそばにいて、これは母、これは妻と延胤に引き合わせた。彼は先師の孫にも当たる人に自分の継母や妻を引き合わせることを深いよろこびとした。めずらしい客と聞いてよろこぶお粂《くめ》と宗太も姉弟《きょうだい》らしく手を引き合いながら、着物を着かえたあとの改まった顔つきで、これも母親のうしろからお辞儀に出た。半蔵の娘もすでに十四歳、長男の方は十二歳にもなる。
 延胤も旅を急いでいた。これから、中津川泊まりで行こうという延胤のあとについて、一緒に中津川まで行くことを半蔵に勧めるのも縫助だ。そういう縫助も馬籠まで来たついでに、同門の景蔵の家まで見送りたいと言い出す。これには半蔵も心をそそられずにはいられなかった。早速《さっそく》彼は隣家の伏見屋へ下男の佐吉
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