しいられた宿場の過去と、一緒にこの街道に働いた人たちの言葉にも尽くされない辛労とを語らないものはない。
 思わず半蔵は伊之助と共に、しばらく会所での最終の時を送った。その時、彼は伊之助の顔をながめながら、静かな声で、感ずるままを語った。彼に言わせると、先年お救い願いを尾州藩に差し出した当時、すでに宿相続をいかにすべきかが一同の問題になったくらいだ。あの時の帳尻《ちょうじり》を見てもわかるように、七か年を平均して毎年百七十両余が宿方の不足になっていた。あの不足が積もって行く上に、それを補って来た宿方の借財が十六口にも上って、利息だけでも年々二百四十四両余を払わねばならなかった。たとい尾州藩のお救いお手当てがあるとしても、この状態を推し進めて行くとしたら、結局滅亡に及ぶかもしれない。宿場にわだかまる多年の弊習がこの行き詰まりを招いた。さてこそ新規まき直しの声も起こって来たのである。これまで自分は一緒にこの街道に働いてくれる人たちと共に武家の奉公を耐《こら》えようとのみ考え、なんでも一つ辛抱せという方にばかり心を向けて来たが、問屋も会所もまた封建時代の遺物であると思いついて、いささか悟るとこ
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