は竹は手に入るまいか。」
「竹でございますか。それなら、わたしどもの裏にいくらもございます。」
「これで奥筋の方へまいりますと、竹もそだちませんが、同じ木曾でも当宿は西のはずれでございますから。」と半蔵のそばにいて言葉を添えるものもある。
「それは何よりだ。そういうことであったら、獄門は青竹で済ませたい。そのそばに御制札を立てたい。早速《さっそく》、村の大工をここへ呼んでもらいたい。」
 一切の準備は簡単に運んだ。宿役人仲間の桝田屋《ますだや》小左衛門は急いで大工をさがしに出、伏見屋伊之助は青竹を見立てるために本陣の裏の竹藪《たけやぶ》へと走った。狭い宿内のことで、このことを伝え聞いたものは目を円《まる》くして飛んで来る。問屋場の前あたりは大変な人だかりだ。
 その中に宗太もいた。本陣の小忰《こせがれ》というところから、宗太は特に問屋の九郎兵衛に許されて、さも重そうにその首桶《くびおけ》をさげて見た。
「どうして、宗太さまの力に持ちあがらすか。首はからだの半分の重さがあるげなで。」
 そんなことを言って混ぜかえすものがある。それに半蔵は気がついて、
「さあ、よした、よした――これはお前
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