こんなことで軍の規律は保てないと見たんでしょう。」
「あの仲間が旗じるしにして来た租税半減というのは。」
「さあ、東山道軍から言えば、あれも問題でしょうね。実際新政府では租税半減を人民に約束するかと、沿道の諸藩から突っ込まれた場合に、軍の執事はなんと答えられますかさ。とにかく、綾小路らの公達《きんだち》が途中から分かれて引き返してしまうのはよくよくです。これにはわれわれの知らない事情もありましょうよ。おそらく、それや、これやで、東山道軍からはあの仲間も経済的な援助は仰げなくなったのでしょう。」
「だいぶ、話が実際的になって来ましたね。」
「まあ、百二十人あまりからの同勢で、おまけに皆、血気|壮《さか》んな人たちと来ています。ずいぶん無理もあろうじゃありませんか。」
「われわれの宿場を通ったころは、あの仲間もかなり神妙にしていましたがなあ。」
「水戸《みと》浪士の時のことを考えて見たまえ。幹部の目を盗んで民家を掠奪《りゃくだつ》した土佐の浪人があると言うんで、三五沢で天誅《てんちゅう》さ。軍規のやかましい水戸浪士ですら、それですよ。」
「それに、あの相良惣三の仲間が追分《おいわけ》の方で
前へ
次へ
全419ページ中152ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング