の間に生みつつある偽《にせ》官軍のことに連関して、一層街道の取り締まりを厳重にせねばならないというにあったが、取り調べ役はただそれだけでは済まさなかった。右の手に持つ扇子《せんす》を膝《ひざ》の上に突き、半蔵の方を見て、相良惣三ら一行のことをいろいろに詰問した。
「聞くところによると、小諸《こもろ》の牧野遠江守《まきのとおとうみのかみ》の御人数が追分《おいわけ》の方であの仲間を召し捕《と》りの節に、馬士《まご》が三百両からの包み金《がね》を拾ったと申すことであるぞ。早速《さっそく》宿役人に届け出たから、一同立ち会いの上でそれを改めて見たところ、右の金子《きんす》は賊徒が逃げ去る時に取り落としたものとわかって、総督府の方へ訴え出たとも申すことであるぞ。相良惣三の部下のものが、どうして三百両という大金を所持していたろう。半蔵、その方はどう考えるか。」
そんな問いも出た。
その席には、立ち会いの用人も控えていて、取り調べ役に相槌《あいづち》を打った。その時、半蔵は両手を畳の上について、惣三らの一行が馬籠宿通行のおりの状況をありのままに述べた。尾張領通行のみぎりはあの一行のすこぶる神妙であ
前へ
次へ
全419ページ中138ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング