だ。こういう時に、平田篤胤没後の門人が諸藩の中にもあると考えて見たまえ。あの越前藩の中根雪江が、春嶽公と同藩の人たちとの間に立って、勤王を鼓吹してるなぞは、そのよい例じゃないかと思うね。それから、越前には君、橘曙覧《たちばなあけみ》のような同門の歌人もあるよ――もっとも、この人は士分かどうか、その辺はよく知らないがね。」
「とにかく、暮田さん。同門の人たちが急にふえて来たことは、驚くようですね。他の土地は知りませんが、あなたが伊那に来て隠れていた時分、一年の入門者は二十人くらいのものでしたろう。それでもあの谷じゃ、七人か九人から急に二十人の入門者ができたと言って、みんな肩身が広くなったように思ったものです。どうでしょう、昨年の冬からこの春へかけて、一息に百人という勢いですぜ。」
「この調子で行ったら、全国の御同門は今に三千人を越えるだろうね。そりゃ君、士分のものばかりじゃない。堂上の公卿《くげ》衆にだって、三十人近い御同門のかたができて来たからね。こんなに故人の平田篤胤を師と頼んで来る人のあるのは、どういう理由《わけ》かと尋ねて見るがいい。あの篤胤先生には『霊《たま》の真柱《まはしら》
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