ような公使らの顔をその窓のところに見ることはできた。駕籠の造りは蓙打《ござう》ちの腰黒《こしぐろ》で、そんな乗り物を異国の使臣のために提供したところにも、旧《ふる》い格式などを破って出ようとする新政府の意気込みがあらわれている。初めて正香らの目に映る西洋人は、なかなかに侮りがたい人たちで、ことに代理公使の方は、犯しがたい威風をさえそなえた容貌《ようぼう》の人であった。髪の毛色を異にし、眸《ひとみ》の色を異にし、皮膚の色を異にし、その他風俗から言葉までを異にするような、このめずらしい異国の人たちは、これがうわさに聞いて来た京都かという顔つきで、正香らの見ているところを通り過ぎて行った。
その時、オランダ人の参内を見送った群集はさらに英国公使の一行を待ち受けた。これは随行の赤備兵《あかぞなえへい》を引率していて、一層|華々《はなばな》しい見ものであろうという。ところが智恩院を出たはずの公使らの一行が、待っても、待ってもやって来ない。しまいには正香らはあきらめて、なおも辛抱強くそこに立ち尽くしている多勢の男や女の群れから離れた。
「暮田さん、なんだかわたしは夢のような気がする。」
正香と
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