ても、また数年のうちには復古することは疑いない。そうも説いてある。
半蔵はこれを読んで復古の機運が熟したのは決して偶然でないことを思った。彼の耳に聞きつける新しい声は、実にこの写本の筆者のいわゆる「草叢《くさむら》の中」から来たことをも思った。
もはや恵那山《えなさん》へは幾たびとなく雪が来た。半蔵が家の西側の廊下からよく望まれる連峰の傾斜までが白く光るようになった。一か月以上も続いた「ええじゃないか」のにぎやかな声も沈まって行って見ると、この国|未曾有《みぞう》の一大変革を思わせるような六百年来の武家政治もようやくその終局を告げる時に近い。街道には旅人の往来もすくない、山家はすでに冬ごもりだ。夜となればことにひっそりとして、火の番の拍子木《ひょうしぎ》の音のみが宿場の空にひびけて聞こえた。
ある朝、半蔵は村の万福寺の方から伝わって来る鐘の音で目をさました。店座敷の枕《まくら》の上できくと、その音は毎朝早い勤めを怠らない松雲和尚《しょううんおしょう》の方へ半蔵の心を連れて行く。それは万福寺の新住職として諸国遍歴の修行からこの村に帰り着いたその日から、当時の習慣としてまず本陣と
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