夜明け前
第一部下
島崎藤村
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)王滝《おうたき》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)本陣|問屋《といや》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「くさかんむり/稾」、18−3]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)そも/\
−−
第八章
一
「もう半蔵も王滝《おうたき》から帰りそうなものだぞ。」
吉左衛門《きちざえもん》は隠居の身ながら、忰《せがれ》半蔵の留守を心配して、いつものように朝茶をすますとすぐ馬籠《まごめ》本陣の裏二階を降りた。彼の習慣として、ちょっとそこいらを見回りに行くにも質素な平袴《ひらばかま》ぐらいは着けた。それに下男の佐吉が手造りにした藁草履《わらぞうり》をはき、病後はとかく半身の回復もおそかったところから杖《つえ》を手放せなかった。
そういう吉左衛門も、代を跡目《あとめ》相続の半蔵に譲り、庄屋《しょうや》本陣
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